― 焦らずに整える、という選択 ―
立夏という節目は、「夏が始まる」という暦の合図。
けれど本当は、始まりきる前の、微細な揺らぎの季節なのかもしれません。
前回のカードリーディングでは、ワンドのペイジやペンタクルのカードたちが、「助走の時間」や「焦らずに整える大切さ」を教えてくれました。そして後半、3枚のオラクルカードもまた、同じテーマを繰り返し語りかけてきました。
1枚目に現れたのは、「願いの井戸」。けれどそれは、逆位置でのメッセージでした。
願いは、強く願えば願うほど実現する—そう信じたくなるときほど、実は手放すことが必要になるのかもしれません。
見えない存在たちと、静かに共同創造していくこと。
「欲しい」という気持ちが強くなったら、あえて一歩引いてみる。他人事として自分の願望を見つめ直し、「それは本当に今、必要なんだろうか?」と問い直す。それが、立夏後半の第一歩です。
2枚目の「飛翔」のカードも、逆位置で現れました。
“まだ飛ぶべき時ではない”。
それは、羽ばたけないということではなく、「羽ばたくその日のために、いまは足元を整えるとき」という意味。
ギリシア神話のイカロスのように、焦って高く飛びすぎれば、まだ固まりきっていない翼は壊れてしまうかもしれません。
いま大切なのは、足元の地面を感じること。日常を整えること、そして「自分の準備を信じる」という謙虚な力です。
3枚目の「ゆっくりと着実に」は、さらに深く問いかけてきます。
> Human “Being”私たちは、行動する前に、“存在する”ことを思い出す必要がある。
目に見える成果やスピードではなく、自分の呼吸のリズムに戻ること。今ここに、落ち着いて「在る」こと。
すべての果実は、それぞれのタイミングで熟していきます。
だから今は、静かな実りの予感を感じながら、一歩ずつ、ていねいに歩みを重ねていくときなのです。-
ひと言でまとめるなら、立夏は、「焦るな」のサイン。外の世界は動きはじめていても、心はまだ、芽吹きの途中にいるのかもしれません。
それでいい。
それが自然。
そのまま、今の自分の歩幅を大切にしてください。
次の節気「小満」では、少しずつ、育ててきたものがかたちを見せはじめます。そのときに向けて、今は「整えること」を喜びに。
静けさの中で聞こえる小さな音に、耳をすませる…そんな時間がBeing、いまここに在ること。
立夏の風が、そっと背中を押してくれるはずです。
おわりに
立夏は、「始まり」と「静かな育成」が同居する節目。
暦の上では夏の気配が満ちてきても、
内側ではまだ、芽吹きの準備を続けている最中かもしれません。
連休明け、まわりが少しずつ動き出す気配に、自分までそわそわしてしまう。
でも、カードたちはこう語っています――
「焦らなくていい。あなたの歩幅で、進んでいけばいい。」
動けない自分を責めるのではなく、
いま静かに整えている時間こそが、
やがて確かな“はじまり”を支えるものになるのだと、信じてみてください。
『整える』とは
暮らしを少し軽くすること
…たとえば机の上のいらない紙を一枚捨ててみる。
そんな「ささやかなこと」でも心の風通しはよくなります。
机の上を片づけたり、
お湯をわかし、丁寧にお茶を淹れるようなこと。
溜まった気持ちをノートに綴ること。
そんな小さな“日常の手入れ”が
未来を迎える器を、静かに整えてくれます。
次回のカードリーディングは、5月21日『小満』になります。
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