期間:10月23日~11月6日
今日から二十四節気「霜降」に入ります。
日脚は短くなり、霜が降り始める頃。
実際、葉山では昨夜、布団をもう一枚足さないと冷えるくらいの気温でした。日中が暑かった分、この急激な気温の変化には驚きます。
けれど、二十四節気ということで捉えてみれば、次の節気は11月7日の立冬。暦の上では冬に入るのですから、ようやく体感が季節に追いついたのかもしれません。
さて、少し世界に目を向けてみると、こちらもさまざまな変化が起きています。
2026年10月23日現在、世界各地では生活費の高騰などを背景とした抗議活動が起き、金融市場ではAIへの巨額投資をめぐって、期待と不安が入り交じっています。
サイバーセキュリティの問題は、私たちの日常生活を支えるインフラにも関わっていますし、各地で報じられる異常気象も気になるところです。
もちろん、それぞれの出来事には異なる背景があります。
けれど、ニュースを眺めていると、これまで当たり前だと思っていた仕組みや、安定していると思っていたものについて、改めて考えさせられます。
一つの出来事について、専門家がさまざまな分析をしています。けれど、何が起きているのかを理解することと、その先に何が起きるのかを知ることは、同じではありません。
情報が増えれば増えるほど、かえって何を信じたらよいのか分からなくなることもあります。
そんな霜降の始まりに、5枚のタロットカードを引いてみました。
今回使ったのは、レイチェル・ポラックの「ドクター・アポロの何でもスプレッド」です。
霜降の5枚のカード
今回のカードは、次のように並びました。
- 知られしもの:愚者・逆位置
- 知られざるもの:ワンドの4・逆位置
- 危うし!:ソードのキング・正位置
- 幸運!:カップのクイーン・正位置
- アクション!:ソードの8・正位置
並んだカードを眺めて、まず気になったのは色でした。
上下にある愚者とワンドの4は、どちらも黄色い背景で、しかも逆位置。
左右にあるソードのキングとカップのクイーンは、どちらも青い背景で正位置。
そして中央には、灰色の世界で目隠しをされた女性が立っています。
黄色は光や意識、知性を連想させる色。また、五行思想では「土」に対応する色でもあります。ちょうど今は、秋から冬への移り変わりにあたる土用の時期です。
もちろん、タロットの色彩と五行思想は別の象徴体系ですが、こうして眺めると、なかなか興味深い組み合わせです。
では、カードを一枚ずつ、少しだけ見てみましょう。
知られしもの ― 愚者・逆位置
愚者は、明るい太陽の下、崖の縁に立っています。
彼は空を仰ぎ、これから始まる旅に心を躍らせているようです。
けれど、足元には崖がある。
逆位置で「知られしもの」に現れたこのカードは、私たちがすでに、無邪気に前へ進むことの危うさを感じ始めていることを表しているのかもしれません。
AIへの巨額投資、データセンター、借金、銀行、PHP、ネットをみればテレビのニュースでは流れないこともいろいろ流れています。その真偽はともかく、これらはすべて「便利だからもっと作ろう」「成長するからもっと投資しよう」「これまで動いてきたのだからこの先も動くだろう」という愚者の前進が、とうとう崖の先まで来てしまったことを表しているようにも思えます。
ただ、愚者の素晴らしさは、まだ知らない世界へ踏み出す勇気を持っていることでもあります。
だから、ここで問われているのは、勇気を捨てることではなく、無邪気さと無謀さを見分けることなのでしょう。
知られざるもの ― ワンドの4・逆位置
ワンドの4には、花で飾られた4本の棒と、喜びを分かち合う人々が描かれています。
その向こうには、城のような建物が見えます。
このカードを眺めていると、「安定とは何だろう」という問いが浮かびます。
私たちは、頑丈な建物や大きな組織、確立された制度があれば安心できると考えがちです。
けれど、このカードで人々が祝っているのは、城の中ではありません。
手前にある、花で飾られた場所です。
本当に私たちを支えているものは、目に見える大きな仕組みだけなのでしょうか。
世界の巨大な仕組みが揺れたとき、本当に人を支えるものはなんなのか。
巨大金融システムなのか、インターネットなのか、国家なのか。
それとも、
家族や友人とのつながり、日々の暮らし、自分ができる仕事、誰かと喜びを分かち合える時間というような、もっと小さな基盤なのか。
「知られざるもの」に逆位置で現れたワンドの4は、自分が安定だと思っているものと、本当に自分を支えているものは同じなのか、と問いかけているように感じます。
危うし! ― ソードのキング・正位置
ここから、今回のカードはますます面白くなります。
ソードのキングは、知性、論理、客観的な判断力を備えた王です。
しかも正位置。
それなのに、「危うし!」の場所に現れました。
なぜでしょう。
彼の知性が間違っているわけではありません。むしろ、優れた判断力を持っているからこそ、その力を過信する危険があるのかもしれません。
「私はもう分かった」
そう思った瞬間に、まだ分かっていないものまで切り捨ててしまう。
しかも彼は王です。
王の判断は、自分だけでなく、多くの人に影響を与えます。
専門家の分析も、社会の仕組みを支える判断も、私たちにとって大切なものです。
けれど、どれほど優れた知性であっても、未来のすべてを知ることはできません。
ソードのキングは、すでに存在する世界を理解しようとする力。
その力は大切ですが、今ある現実をどれほど詳しく分析しても、そこから未来のすべてが分かるわけではありません。
知性を使うことと、知性によってすべてをコントロールできると思うことは、違うのでしょう。
幸運! ― カップのクイーン・正位置
そして、ソードのキングの向かい側にいるのが、カップのクイーンです。
彼女は剣を持っていません。
その手にあるのは、まるで小さな神殿のような、不思議な形の杯。
彼女はその杯を静かに見つめています。
レイチェル・ポラックは、カップのクイーンについて、愛情を与えるだけでなく、愛を感じ取る能力を持つ存在として説明しています。
さらに、創造性、芸術、癒し、困難な状況における守護といった意味にも触れています。
私は今回、この「創造性」という言葉がとても気になりました。
ソードのキングが、すでに存在する世界を理解しようとするのに対して、カップのクイーンは、まだ存在しない世界を想像することができます。
私たちは何かを生み出すとき、まず心の中にイメージを描きます。
芸術家が作品をつくるときも、最初から完成した作品が目の前にあるわけではありません。
まだ形になっていないものを感じ取り、想像し、少しずつ現実の中に表していく。
その意味で、想像力は単なる空想ではなく、現実をつくる過程に関わる力なのだと思います。
そして、愛情もまた、目には見えないものです。
けれど、誰かを愛する気持ちは、言葉や行動を変え、人と人との関係を変えていきます。
カップのクイーンは、そうした目に見えない力が、現実に働きかけることを知っている女性なのかもしれません。
彼女は、杯の中身が見えないからといって、それを壊して確かめようとはしません。
まだ分からないものを、分からないまま大切に扱うことができるのです。
それは、知性を捨てるということではありません。
今ある現実を理解する力と、まだない未来を想像する力。
私たちには、その両方が必要なのでしょう。
アクション! ― ソードの8・正位置
そして、中央に現れたのがソードの8です。
目隠しをされ、身体を縛られた女性が、8本の剣に囲まれて立っています。
周囲は灰色で、なんとも不自由な光景です。
ところが、このカードが出た場所は「アクション!」。
何をすべきかを示す位置なのです。
世界の動きが複雑になり、さまざまな情報や予測が飛び交う中で、私たちは何か行動しなければ、何か備えなければ、と考えてしまうことがあります。
けれど、金融も政治も、技術も、さまざまな人々の判断が影響し合って動いています。
どれほど大きな力を持つ人であっても、そのすべてを思いどおりにすることはできません。
まして、個人の力で変えられることには限界があります。
それなら、今、この女性に必要な行動とは何なのでしょう。
私は、外側へ向かって無理に動こうとすることではなく、自分の内側へ入っていくことなのではないかと思いました。
周囲には、たくさんの剣があります。
考えること、分析すること、予測すること。
けれど、考えれば考えるほど、かえって身動きが取れなくなることもあります。
そんなとき、少しだけ外側の世界から意識を離してみる。
自分が何を感じているのか。
何を愛し、何を大切にしているのか。
どんなものを想像し、創造したいのか。
この女性は目隠しをされているため、外側の世界を見ることができません。
でも、外側が見えないことと、内側にイメージを描けないことは、まったく違います。
むしろ、目を閉じたときに初めて見えてくるものだってあるでしょう。
身体が縛られていても、想像力まで縛られているわけではありません。
そして、その想像力は、やがて私たちの言葉や行動を変え、現実の中に新しい可能性を生み出すことがあります。
もちろん、現実に必要な備えや行動は大切です。
けれど、まだ起きていない未来への不安に駆り立てられて、無理に動く必要はないのかもしれません。
今は、自分の内側にあるカップのクイーンを呼び覚ますとき。
外側の世界を思いどおりにできなくても、自分の内側には、愛情や想像力、創造する力がある。
そして、それは誰かに与えてもらわなければならないものではなく、すでに自分の中にあるものなのです。
心の中の女王を呼び覚ます
こうして5枚を眺めてみると、今回のカードには一つの物語があるように感じます。
愚者は、知らない世界へ踏み出そうとしています。
ワンドの4は、私たちが安定と呼んでいるものについて問いかけています。
ソードのキングは、知性によって世界を理解しようとします。
けれど、中央の女性は、たくさんの剣に囲まれ、身動きが取れなくなっている。
そして、その向こうには、静かに杯を見つめるカップのクイーンがいます。
外側の世界が複雑になり、何が正しいのか分からなくなったとき。
私たちは、もっと情報を集め、もっと分析し、何とか答えを見つけようとするかもしれません。
でも、時には少しだけ、その剣を下ろしてみてもよいのではないでしょうか。
自分の内側にある、愛情や想像力、創造する力に目を向けてみる。
そこには、外側の状況だけでは決められない、もう一つの自由があるように思います。
秋分のリーディングでは、月明かりの下、水の中からザリガニが姿を現しました。
そして今回の霜降では、カップのクイーンの足元にも水が描かれています。
あのとき水から出てきた未知のものを、今度は静かに受け止める時間なのかもしれません。
以前、私はソードの8があまり好きではありませんでした。
目隠しをされ、身体を縛られ、剣に囲まれている女性を見ると、どうしても不自由さや苦しさを感じていたからです。
けれど、今は少し違います。
ソードの8の女性の内側にも、カップのクイーンがいる。
そう思えるようになったからです。
外側から見れば、身動きが取れない女性。
けれど、その内側には、愛を感じ、想像し、創造する力を持つ女王がいる。
彼女は、カップのクイーンになるために、どこかへ脱出する必要さえないのかもしれません。
もともと、その力を持っているのですから。
世界のすべてを理解することはできなくても、世界の中で生きていくことはできます。
そして、今すぐどこかへ向かって動けなくても、自分の内側には、まだ誰にも奪われていない豊かな世界がある。
そんなことを、今回の5枚のカードは教えてくれたように思います。
二十四節気18番目『霜降』、良い日々になりますように。

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