二十四節気「立冬」のタロットリーディング― 見えなかった扉

オラクルカードメッセージ

11月7日、立冬。

暦の上では、今日から冬が始まります。

昨日は夏が戻ってきたかと思うほどの暖かさでしたが、今日は少し空気が変わりました。

とはいえ、まだ冬というより、これから秋が深まっていくような気配です。

暦の上では冬が始まっていても、私たちの暮らしの中では、まだ秋が続いている。

季節の変化というものは、いつも私たちが思っているとおりに訪れるわけではないのですね。

そして、それは世界の動きにも、少し似ているのかもしれません。

今までの世界は、これからも続くのだろうか

最近、Xを開くと、世界のさまざまな場所で起きている出来事が次々と目に飛び込んできます。

経済のこと、国と国との関係、これまで当たり前だと思っていた仕組みが揺らいでいるように見える話。

もちろん、そこに流れてくる情報がすべて正しいとは限りません。断片的な情報もあれば、誇張された話もあります。

それでも、いくつもの情報を眺めていると、不思議な感覚になることがあります。

私たちが毎日暮らしている世界と、画面の向こうに広がる世界が、まるで別々の場所のように感じられるのです。

今日もお店は開き、電車は走り、いつもの生活が続いている。

この仕組みは、これからもずっと続いていく。

私たちは、どこかでそう思っているのかもしれません。

私は時々、そんな日本の暮らしを、映画『ロード・オブ・ザ・リング』に登場するシャイアに重ねて考えます。

緑の丘が広がり、庭には花が咲き、ホビットたちは食事を楽しむ。

遠い国で何が起きていようと、シャイアの一日はいつもどおりに過ぎていきます。

けれど、シャイアもまた、世界の一部なのです。

そんなことを考えながら、今回の立冬のカードを引きました。

立冬のタロットリーディング

今回も、レイチェル・ポラックの「ドクター・アポロの何でもスプレッド」を使いました。

知られしもの ― 魔術師・正位置

知られざるもの ― ペンタクルの8・逆位置

危うし! ― ソードの5・正位置

幸運! ― ペンタクルの5・逆位置

アクション! ― ワンドの10・逆位置

最初にこの5枚を見たとき、少し戸惑いました。

魔術師は、新しいことを始める力を持っています。

けれど、残りのカードには、不満、争い、困窮、重荷といった、どこか苦しい印象があります。

しかも、逆位置が三枚。

この5枚は、何を伝えようとしているのでしょうか。

ソードの5 ― 勝ったのは誰なのか

まず気になったのは、「危うし!」に出たソードの5でした。

手前の男性は、剣を集めています。

遠くには、背を向けて立ち去る二人の姿。

普通に見れば、勝者と敗者の絵でしょう。

けれど、しばらく眺めているうちに、違う物語が浮かんできました。

手前の男性は、こう思っているのではないでしょうか。

「今回も、うまくやった。俺の勝ちだ」

ところが、立ち去る二人は、こんなことを考えているのかもしれません。

「また、いつものやり方か。もう君のゲームには付き合っていられないよ」

そうだとしたら、本当に勝ったのは誰なのでしょう。

剣を手に入れた男性は、確かに勝ったつもりでいます。

でも、その勝ち方を続けた結果、一緒に生きていく人たちがいなくなってしまったら?

人間は、一人では社会をつくれません。

勝ち続けることによって、かえって自分の世界を狭めてしまうこともあります。

そして、立ち去った二人は、必ずしも敗者ではありません。

もうその争いに参加しないという、別の選択をしたのかもしれないのです。

今までうまくいっていたやり方は、本当にこれからも通用するのでしょうか。

この問いは、世界の仕組みにも重ねられます。

けれど、国や経済の話だけではありません。

家族の中で、いつも一人が責任を背負っている。

職場で、誰かが勝ち続けることで関係が成り立っている。

恋人同士が、どちらが正しいかを争っている。

そうした関係も、ある日、誰かが「もう今までどおりにはできない」と言ったとき、変わり始めます。

その変化は、最初は不幸に見えるかもしれません。

けれど、それまでの関係を続けることが、本当に幸せだったのでしょうか。

そして、勝つことにこだわっていた人自身も、そのこだわりを手放すことで、違う関係を築けるのかもしれません。

ペンタクルの8・逆位置 ― 成熟とは何か

「知られざるもの」に出たのは、ペンタクルの8・逆位置でした。

レイチェル・ポラックは、このカードの逆位置について、現状への不満や長期的な計画の必要性、そして人生の重要な領域で、より高い段階へ移行する可能性を述べています。

それは、仕事だけの話ではありません。

家族や人間関係にも当てはまります。

私たちは、成長するというと、何かが上手になることや、より多くのものを手に入れることを考えがちです。

けれど、長い間続けてきたことを見直す。

自分が当然だと思ってきた役割を問い直す。

勝つことや、認められることへのこだわりを手放す。

それもまた、成熟の一つなのかもしれません。

ペンタクルの5・逆位置 ― 見えなかった扉

今回、「幸運!」に出たのは、ペンタクルの5・逆位置でした。

このカードを見たとき、私は映画『ロード・オブ・ザ・リング』のある場面を思い出しました。

この物語には、ホビットという小さな種族が暮らす、シャイアという平和な故郷が登場します。

緑の丘と美しい田園が広がり、人々が穏やかに暮らす場所です。

主人公のフロドは、世界を脅かす邪悪な力に立ち向かう旅の途中で、エルフの女王ガラドリエルに出会います。

彼女は、不思議な力を持つ水鏡をフロドに見せます。

その鏡には、過去や現在だけでなく、これから起こるかもしれない未来も映し出されるのです。

ただし、そこに映った出来事が、必ず現実になるとは限りません。

フロドが鏡の中で目にしたのは、変わり果てた故郷シャイアの姿でした。

平和だった土地が荒れ果て、ホビットたちが苦しめられている。

自分が知っていた世界が、まったく違う世界になってしまう。

それは、とても恐ろしい光景です。

けれど、この場面を思い出したとき、私はふと考えました。

見えるようになることが、救いなのではないだろうか。

もし、何も知らなければ、フロドは故郷が危険にさらされる可能性すら考えなかったかもしれません。

けれど、起こりうる未来を見たことで、自分が何を守りたいのか、そして何を選ぶべきなのかを考えられるようになります。

未来は、まだ決まっていない。

だからこそ、見えることには意味があるのではないでしょうか。

ペンタクルの5には、雪の中を歩く二人が描かれています。

そのすぐそばには、美しいステンドグラスの窓があります。

レイチェル・ポラックは、逆位置になると、この窓が扉のように見えると指摘しています。

窓は、外から眺めるもの。

扉は、そこを通って向こう側へ行けるもの。

今まで壁だと思っていたところに、入口が見つかる。

苦しみが存在しなくなるわけではありません。

けれど、今まで見えていなかった助けや出口が、見えるようになるのかもしれません。

だから、このカードは「幸運!」なのでしょうか。

ワンドの10・逆位置 ― 何を手放すのか

最後のカードは、ワンドの10・逆位置。

「アクション!」の位置に出ています。

正位置では、男性が10本もの棒を抱えて歩いています。

逆位置には、責任からの解放や負担の分担という意味がある一方で、もう持ちこたえられず、抱えていたものが崩れるという読み方もあります。

自分から重荷を下ろすのか。

それとも、もう支えきれなくなって、下ろさざるを得なくなるのか。

この違いは、とても大きいように思います。

例えば、家族のために、いつも自分の時間を後回しにしてきた人。

仕事で、誰にも頼らず責任を背負い続けてきた人。

あるいは、何かを成し遂げなければ、自分には価値がないと思い込んできた人。

本当に、その重荷をすべて抱え続けなければならないのでしょうか。

目標を捨てる必要はありません。

大切な人への愛情を捨てる必要もありません。

けれど、そのために、自分の人生を楽しむことまで後回しにする必要があるのでしょうか。

ここで、もう一つの映画を思い出しました。

1972年公開、キャロル・リード監督の『フォロー・ミー』です。

ロンドンを舞台にした、少し不思議で、愛らしい物語。

ミア・ファローが演じるベリンダは、自由で好奇心にあふれた女性です。

彼女は、街を歩き、面白いものを見つけ、毎日を楽しむことが大好き。

けれど、そんな彼女の自由な生き方を、夫はなかなか理解することができません。

妻の行動に疑問を抱いた夫は、私立探偵に彼女の尾行を依頼します。

ところが、その探偵もまた、少し変わった人物でした。

やがて、妻を追いかけることから始まった出来事は、夫婦が互いを見つめ直す物語へと変わっていきます。

私は、この映画の最後の場面が好きです。

ベリンダが、ふと振り返ります。

自分のことを見ていてくれるだろうか。

そう思って振り返ると、夫がちゃんと彼女を見ています。

何かを成し遂げたから、見てほしいのではありません。

ただ、自分らしく生きている姿を、誰かが喜んで見ていてくれる。

あの場面には、そんな幸せが描かれているように感じます。

私たちは、いつの間にか、何かを成し遂げることを人生の目的にしてしまうことがあります。

けれど、人生を楽しむことは、努力のご褒美でなくてもいいのかもしれません。

魔術師 ― 自分の力をどう使うのか

ここで、最初のカードに戻ってみたいと思います。

「知られしもの」に出た、魔術師・正位置。

魔術師は、四つの道具を持っています。

新しいものを生み出す力があり、自分の意思で行動することができます。

けれど、その力を、いつも何かに勝つために使わなければならないわけではありません。

誰かを支配するためでも、常に成果を上げるためでもなく、自分の人生を豊かにするために使うこともできるのです。

そして、ときには道具を置いてもいい。

前回の霜降のリーディングでは、「アクション!」にソードの8・正位置が出ました。

目隠しをされ、剣に囲まれた女性。

私たちは、彼女の内側にはカップのクイーンがいるのではないかと考えました。

外の世界がどうであっても、心の中にある想像力や自由まで奪われたわけではない。

霜降では、その内側の自由に気づくことがテーマだったのかもしれません。

そして今回の立冬では、その自由を使って、現実の中で今までのやり方を選び直す。

そんなふうに、二つの季節がつながっているように感じます。

冬の始まりに

世界が変わっていくことは、恐ろしいものです。

今までのやり方が通用しなくなることも、決して楽なことではありません。

でも、それまで見えていなかったものが見えるようになれば、違う選択ができるかもしれません。

世界の出来事を、自分一人で背負う必要はありません。

それでも、世界を眺めながら、自分自身の中にも同じような問いがあることに気づくことはできます。

私たちは、何を当たり前だと思っているのでしょう。

何を守ろうとしているのでしょう。

そして、何をもう手放してもいいのでしょう。

立冬。

冬が始まります。

木々が葉を落とすように、私たちも、今まで抱えていたものを少しずつ下ろしていく季節なのかもしれません。

何かが終わることは、必ずしも不幸ではありません。

今まで見えなかった扉が、そこに現れることもあります。

そして、その扉の向こうには、まだ知らない自分の人生が続いているのです。

良い日々になりますように。

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